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高血圧と運動|血圧を下げる効果とおすすめの習慣を解説
高血圧の改善には、食事療法と並行して運動を取り入れることが推奨されます。
なぜ運動が高血圧に効果があるのか、その理由を知ることで、主体的に血圧対策に取り組めるようになります。
この記事では、血圧対策におすすめの運動メニュー、そして無理なく続けるための習慣化のコツまでを解説します。
自分に合った運動を見つけ、正しい方法で実践するための情報を提供します。
運動が高血圧の改善に効果的な理由
運動が高血圧の改善に効果的なのは、身体活動と血圧の間に密接な関係があるためです。
運動を習慣にすると、血圧をコントロールする体内の仕組みが多角的に整えられます。
具体的には、血管の機能が改善されたり、自律神経のバランスが整ったりすることで、安定した血圧を維持しやすくなります。
また、肥満の解消といった副次的な効果も、血圧の正常化に大きく貢献します。
血圧降下につながる運動のメカニズム
運動を継続すると、体内で血圧を下げるための様々なメカニズムが働きます。
運動中は一時的に血圧が上がりますが、習慣的に行うことで血管内皮機能が改善され、血管が拡張しやすくなり、結果として血圧が下がるのです。
また、運動で汗をかくことにより、体内の余分な塩分や水分が排出されます。
さらに、定期的な運動は心肺能力を高め、心臓が一度に送り出す血液の量が増えるため、心拍数が落ち着き、長期的に血圧が安定します。
自律神経のバランスが整い、血管の過度な収縮が抑えられることも、血圧が下がる一因です。
肥満解消など生活習慣病の予防にもつながる
運動には高血圧の改善以外にも多くのメリットがあります。
継続的な運動はエネルギー消費を増やし、肥満の解消や予防に直結します。
肥満は高血圧の主要なリスク因子であるため、体重を適正にコントロールすることは非常に重要です。
また、運動はインスリンの感受性を高めることで血糖値を安定させ、糖尿病の予防・改善にも役立ちます。
血液中の中性脂肪を減少させ、善玉コレステロールを増やす効果もあり、脂質異常症予防にも有効です。
このように、運動は複数の生活習慣病のリスクを同時に低減させます。
高血圧の改善におすすめの運動メニュー

高血圧を改善するための運動には、いくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。
大切なのは、急激に血圧を上げるリスクが低く、継続しやすい運動を選ぶことです。
高血圧の人に適した運動としては、全身の血行を促進する有酸素運動が基本となります。
それに加え、軽い筋力トレーニングやストレッチを組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
ここでは、高血圧の人向けのおすすめの運動メニューと、それぞれの方法を紹介します。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動
高血圧の改善には、リズミカルに体を動かし、軽度の負荷をかけ続ける有酸素運動が基本となります。
代表的なものに、ウォーキング、軽いジョギング、水中ウォーキングや水泳、サイクリング、社交ダンスなどがあります。
特にウォーキングは、特別な道具や場所を必要とせず、誰でも手軽に始められるため推奨されます。
水泳は、水の浮力によって膝や腰への負担が少ないため、体重が気になる人や関節に不安がある人にも適しています。
これらの運動は、心臓や肺の機能を高め、全身の血流を良くすることで、長期的な血圧の安定に寄与します。
スクワットなどの軽い筋力トレーニング
有酸素運動に加えて、軽い筋力トレーニング(レジスタンス運動)を組み合わせることも、血圧改善に有効です。
筋肉量が増えると基礎代謝が向上し、肥満の解消にも役立ちます。
器具を使わず自宅でできるスクワットや腕立て伏せ、腹筋などが手軽でおすすめです。
筋トレを行う際は、息を止めず、自然な呼吸を続けながらゆっくりとした動作で行うことが重要です。
息をこらえるような無酸素運動や、力を入れたまま静止する等尺性運動は、血圧を急上昇させる可能性があるため避けてください。
あくまで軽い負荷で行うことがポイントです。
心身をリラックスさせるストレッチ
ストレッチは、運動前後の準備運動や整理運動として不可欠です。
筋肉の柔軟性を高めて血行を促進し、怪我の予防に役立ちます。
また、深い呼吸を意識しながら行うストレッチには、副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があります。
これにより、ストレスによる血圧の上昇を緩和することが期待できます。
特別な器具は必要なく、椅子に座ったまま足の筋肉を伸ばしたり、ゆっくりと上半身をねじり、体の側面を伸ばしたりする簡単な動きでも十分です。
毎日の生活の中に気軽に取り入れられます。
血圧を下げる運動を効果的に行うための4つのポイント
血圧を下げる目的で運動を行う場合、やみくもに体を動かすのではなく、いくつかのポイントを押さえることが効果を高めます。
運動の種類だけでなく、頻度や時間、強度といった要素を適切に設定する「運動処方」の考え方が重要です。
また、安全に運動を続けるためには、運動前後のケアも欠かせません。
ここでは、運動の効果を最大限に引き出し、安全に継続するための4つの具体的なポイントを解説します。
ポイント1:運動の頻度は週に3日以上を目安にする
運動による降圧効果は、運動後1~2日程度持続しますが、永続的なものではありません。
そのため、効果を維持するためには定期的に運動を続ける必要があります。
高血圧のガイドラインでは、できれば毎日、定期的に運動することが推奨されていますが、まずは週に3日以上を目標に始めると良いでしょう。
週末にまとめて長時間行うよりも、1日おきなど、間隔を空けずに継続することが効果的です。
無理に毎日行うことを目指すのではなく、自身のライフスタイルに合わせて、着実に続けられる頻度を見つけることが重要です。
ポイント2:運動時間は1回あたり30分以上を目指す
有酸素運動の効果を得るためには、1回あたり30分以上継続することが推奨されています。
しかし、まとまった時間を確保するのが難しい場合でも、諦める必要はありません。
1回10分以上の運動を1日に数回行い、その合計時間が30分以上になれば、連続して行った場合と同等の効果が期待できるとされています。
例えば、朝の通勤で10分、昼休みに10分、帰宅後に10分歩くといった形でも構いません。
運動習慣がない人は、まず10分から始め、徐々に時間を延ばしていくことで、無理なく目標に近づけます。
ポイント3:運動の強度は「ややきつい」と感じる程度に留める
運動の強度は、高すぎても低すぎても効果的ではありません。
血圧改善に適した強度の目安は、主観的に「ややきつい」と感じる程度です。
具体的には、運動中に息が弾むものの、隣の人と笑顔で会話ができるくらいのレベルを維持します。
心拍数で管理する場合、目標心拍数は最大心拍数(220から年齢を引いた数)の50~60%程度が適度な負荷とされます。
強すぎる運動は、かえって血圧を急上昇させるリスクがあるため、決して無理はしないようにしてください。
自身の体力に合わせて、心地よいと感じる強度で行うことが継続の秘訣です。
ポイント4:運動前後のウォームアップとクールダウンを必ず行う
安全に運動を行うためには、運動の開始時と終了時のケアが非常に重要です。
運動前には、5~10分程度のウォームアップを行いましょう。
軽いストレッチや足踏みなどで、心拍数を徐々に上げ、筋肉や関節をほぐすことで、心臓への急な負担や怪我を防ぎます。
運動後も、急に動きを止めてはいけません。
運動のペースを少しずつ落としていき、最後にストレッチなどのクールダウンを5~10分程度行います。
これにより、運動中に高まった心拍数や血圧を緩やかに平常値に戻し、運動直後のめまいや失神といったリスクを低減させます。
高血圧の人が運動を行う際の注意点

運動は高血圧の改善に有効な手段ですが、全ての人に無条件で推奨されるわけではありません。
特に血圧が非常に高い場合や、心臓病などの合併症がある場合は、運動が体に負担をかけ、かえって危険な状態を招くリスクもあります。
運動が禁忌となるケースも存在するため、安全に運動を始めるためには、いくつかの注意点を守る必要があります。
自己判断で始めず、専門家の指導のもとで進めることが原則です。
運動を始める前には必ず医師に相談する
高血圧の治療を受けている方や、心臓病、腎臓病、糖尿病などの合併症がある方は、運動を始める前に必ず主治医に相談してください。
現在の血圧のコントロール状況や服用している薬の種類、合併症の重症度などを総合的に判断し、運動療法の可否や、適切な運動の種類・強度について指導を受ける必要があります。
特に降圧薬を服用している場合、運動によって血圧が下がりすぎる可能性も考慮しなくてはなりません。
安全に運動療法を進めるためにも、まずは専門家によるメディカルチェックを受けることが最初のステップです。
体調がすぐれない日は無理せず休養する
運動の継続は重要ですが、体調がすぐれない日に無理して行うのは禁物です。
発熱、睡眠不足、疲労感が強い日などは、運動を中止して体を休めることを優先しましょう。
また、運動中に頭痛、めまい、吐き気、胸の痛み、動悸、極端な息切れといった症状が現れた場合は、直ちに運動を中止してください。
もし症状が改善しない、あるいは頻繁に起こるようであれば、速やかに医師の診察を受ける必要があります。
自分の体の声に耳を傾け、決して無理をしないことが、安全に運動を続けるための鉄則です。
急激に血圧が上がる強度の高い運動は避ける
高血圧の人は、血圧を急激に上昇させる可能性のある運動は避けるべきです。
具体的には、重量挙げや短距離走といった、瞬間的に強い力を必要とする強度の高い無酸素運動がこれにあたります。
また、収縮期血圧が180mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上(III度高血圧)のような重症の高血圧の場合は、運動療法よりも先に薬物療法による降圧が優先されます。
気温の変化も血圧に影響を与えるため、冬場の早朝や夏の炎天下など、厳しい環境下での運動のしすぎにも注意が必要です。
無理なく運動を習慣化するための3つのコツ
高血圧の改善や予防のためには、運動を一過性のイベントではなく、生活の一部として定着させることが求められます。
しかし、忙しい日々の中で運動を継続することは容易ではありません。
大切なのは、完璧を目指すのではなく、自分にとって無理のない方法を見つけることです。
ここでは、運動を楽しみながら長く続けるための、実践的な3つのコツを紹介します。
コツ1:日常生活の中で体を動かす機会を増やす
わざわざ運動のための時間を確保するのが難しいと感じるなら、日常生活の中での活動量を増やすことから始めましょう。
「ながら運動」を取り入れるのが効果的です。
例えば、通勤時に一駅手前で降りて歩く、エレベーターの代わりに階段を使うといった小さな工夫が挙げられます。
また、自宅の室内でも、テレビを見ながらその場で足踏みをする、掃除や片付けを少しきびきびと行うだけでも立派な運動になります。
このような身体活動の積み重ねが、結果的に血圧の改善につながります。
まずは、座っている時間を減らし、こまめに体を動かすことを意識してみてください。
コツ2:家族や友人と一緒に楽しみながら取り組む
一人で黙々と運動を続けるのが苦手な場合は、誰かと一緒に行うことでモチベーションを維持しやすくなります。
家族や友人を誘ってウォーキングに出かけたり、地域のスポーツサークルやジムに参加したりするのも良い方法です。
仲間がいれば、お互いに励まし合いながら楽しく取り組めます。
運動そのものを目的とするだけでなく、コミュニケーションの機会と捉えることで、義務感が薄れ、自然と継続できるようになります。
共通の目標を持つ仲間を見つけることが、運動を習慣化させる大きな力となります。
コツ3:血圧や体重を記録してモチベーションを維持する
運動を継続していると、少しずつ体に変化が現れます。
その効果を実感するために、毎日の血圧や体重、歩数などを記録する習慣を取り入れることをおすすめします。
スマートフォンアプリや手帳などを活用し、数値を記録していくと、自分の頑張りが目に見える形になります。
血圧が安定してきたり、体重が減少したりといったポジティブな変化を確認できると、それが大きな自信となり、運動を続ける意欲が湧いてきます。
記録をつけることは、体調管理にも役立ち、どのような時に血圧が変動しやすいかを知る手がかりにもなります。
運動と合わせて実践したい生活習慣の改善策
高血圧を効果的に改善するためには、運動習慣だけでなく、食生活をはじめとする生活全般を見直すことが不可欠です。
運動の効果を最大限に引き出し、安定した血圧を維持するためには、食事、嗜好品、休養といった複数の側面からアプローチする多角的な取り組みが求められます。
ここでは、運動療法と並行して実践すべき生活習慣の改善策について解説します。
塩分を控えた栄養バランスの良い食事
高血圧の管理において、食事の改善、特に減塩は非常に重要です。
塩分の過剰摂取は体内に水分を溜め込み、血液量を増やして血圧を上げる主な原因となります。
日本高血圧学会では、1日の塩分摂取量を6g未満にすることを推奨しています。
加工食品やインスタント食品、外食は塩分が多い傾向にあるため、成分表示を確認する習慣が有効です。
調理の際は、出汁の旨味や香辛料、香味野菜などを活用し、薄味でも美味しく食べられる工夫をしましょう。
また、カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ることで、余分な塩分の排出が促されます。
禁煙やアルコールの摂取量を減らす
喫煙と過度な飲酒は、血圧管理の大敵です。
タバコに含まれるニコチンは、交感神経を刺激して血管を収縮させ、一時的に血圧を上昇させます。
長期的な喫煙は動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを著しく高めます。
高血圧と診断されたら、禁煙することが強く推奨されます。
また、アルコールの過剰摂取も血圧を上げる要因です。
飲酒習慣がある場合は、適量を守り、休肝日を設けることが必要です。
飲酒時の適量の目安は、1日あたりビールなら中瓶1本、日本酒なら1合程度とされています。
十分な睡眠時間を確保しストレスを管理する
睡眠不足や精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血圧を上昇させる原因となります。
質の良い睡眠を十分に確保することは、心身の回復と血圧の安定に不可欠です。
毎日決まった時間に就寝・起床することを心がけ、特に朝の光を浴びることで体内時計が整いやすくなります。
また、現代社会においてストレスを完全になくすことは困難ですが、自分なりの解消法を見つけることが重要です。
趣味に没頭する時間を作る、自然の中で過ごす、親しい人と話すなど、心身をリラックスさせる習慣を取り入れてください。
血圧ケアに取り組む業界横断プロジェクト「PROTECT HEARTS PROJECT」のご紹介

セントラルスポーツは、「血圧ケア」の大切さや日々取り組める身近なアクションの啓発に向けて、食品・医療・流通・運動など複数業種の企業が連携する「PROTECT HEARTS PROJECT(読み:プロテクト ハーツ プロジェクト)」に加盟しています。
この「PROTECT HEARTS PROJECT」は、「血圧」という同じ課題に向き合う様々な業界の企業が「事業を通じた社会課題の解決」で連携する取り組みとして開始しました。
食や健康習慣を通して「高めの血圧」に向き合う企業群(TEAM HEALTH:ミツカン、森永乳業) と、疾患のリスク発見~治療に取り組む企業群(TEAM MEDICAL:刀・イーメディカル、オムロンヘルスケア・プリメディカ・新生堂薬局)の計6社からスタートした取り組みは、各企業での新しいサービス展開に加え、発足1年足らずで参画企業が一気に増加し、セントラルスポーツも運動領域のサポートとして参画しています。
いまからできる。すぐにできる。
大切だとはわかっているけれど、何からすれば良いのかわからないー
「血圧ケア」にそんなイメージを持つ人も多いかもしれません。
でもその第一歩は、毎日の食生活の見直しや運動習慣といった、とても身近なところから取り入れることができます。
そしてその小さなひとつひとつの積み重ねが、あなたの健康や、大切な人とのかけがえのない時間へとつながっています。
大切な未来を毎日の小さなケアから。
今日からはじめよう血圧対策。
心臓突然死は、突然じゃない。
健康だと考えられていた人の心臓が、ある日突然、止まってしまう心臓突然死。
この国でも毎年多くの命が奪われており、その数、実に年間8万人。
これは交通事故による死者数の、およそ30倍。
1日に200個以上の心臓が、突然止まっている計算になります。
でも本当に、その日は「突然」訪れるのでしょうか。
気づかぬうちに忍び寄る心臓突然死のリスクから、あなたを守りたい。
毎日、血圧を適切にコントロールすることで、心臓突然死のリスクは減らせます。
ずっと健康な心臓を守り続けるために、今日からできることをー
まとめ

高血圧の改善において、運動療法は食事療法と並ぶ重要な柱です。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動を中心に、軽い筋力トレーニングやストレッチを組み合わせることが推奨されます。
運動は血圧を下げる直接的な効果に加え、肥満の解消や糖尿病、脂質異常症といった他の生活習慣病の予防にも寄与します。
効果的な実践のためには、週3日以上、1回30分以上、「ややきつい」と感じる強度を目安とし、運動前後の準備・整理運動を忘れないようにします。
ただし、運動を始める前には必ず医師に相談し、安全に行うことが大前提です。
最後に、運動だけでなく減塩、禁煙、節酒、ストレス管理といった生活習慣全体の改善を同時に進めることで、総合的な血圧コントロールが可能となります。


