安全・効果的な「スロートレーニング」のすすめ

スクワットをする女性

セントラルスポーツ研究所ニュース

スポーツクラブの休業、外出自粛要請の際、定期的にトレーニングを行っていた方はもちろん、それまであまり運動をしていなかった方も運動をする必要性を感じたと思います。
いざ運動を行おうと思っても何をしたら良いのか?せっかくやる以上効果を実感したい等様々な思いがあったことでしょう。また久しぶりにジムで筋トレを行う場合に今まで通りの強度で行っても大丈夫?という声も聞こえます。
そんな時におススメなのが「スロートレーニング(スロトレ)」。何となく聞いたことはあるという方も多いと思いますが、正しい方法をマスターしましょう。

スロートレーニング(スロトレ)とは

スロートレーニング(以下、スロトレ)とは、筋肉の発揮張力を維持しながら、動作をゆっくり行う筋力トレーニングのひとつの方法です。比較的軽めの負荷でもゆっくりとした動作で行う事で、大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができ、関節や筋肉にかかる負荷も小さいことから、安全に行える効果的なレジスタンス運動として期待されています。

なぜ「スロトレ」は低負荷で効率的に筋肥大が可能なのか

筋肉にグッと力を込めると硬くなり血管は押しつぶされ、血流が制限された状態になります。「スロトレ」は血流が制限された状態を維持したまま動作を行うので、筋肉内の筋酸素化レベルが低下します。この低酸素環境が筋肥大の強い刺激になると考えられています。

そのメカニズムは「代謝物受容反射」で説明することができます。筋肉の中には痛みや疲労、熱などの異変を感知する「代謝物受容器」(侵害受容器)という感覚器官があります。筋収縮によって作られる物質が筋肉の中に蓄積されてくると、その受容器を通して脳に信号が送られ、視床下部から成長ホルモンの分泌、交感神経の活性化が起こります。成長ホルモンが肝臓に作用すると、インスリン様成長因子が分泌されます。インスリン様成長因子は筋細胞内での筋タンパク質合成を促進するため結果としてスロトレで筋肥大反応が起こると考えられています。

一般的に筋力トレーニングで筋肥大、筋力アップ効果を得るためには、1 回だけ上げられる最大重量(1RM)の 65%程度以上の負荷(65%1RM)が必要とされているので、自分の体重を使って行う腕立て伏せのような運動では大きな効果を得るのが難しいとされてきました。しかし 50%1RM の負荷で行ったスロトレで、80%1RM の負荷を用いたトレーニングと同等の筋肥大、筋力アップ効果があったという報告があります。

正しい「スロトレ」の実施方法

スロトレを行う際の正しい方法は以下の通りです。

  1. 血流を常に制限するために、動作中は関節を伸ばしきったり、曲げきらないようにする。
    ※例えばスクワットでは、立ち上がる動作時に膝を伸ばしきらずに再びしゃがみ込む、腕立て伏せでは腕を伸ばしきらずに再び腕を曲げる動作で行う。
  2. 動作は3~6秒かけて行う。
  3. 負荷設定は30~50%1RM を目安とする。
  4. 反復回数は6~10回(1 分以上の時間をかける)とし3~6セット行う。

初めてスロトレを行う方は、3 秒ずつの動作で 10 回×3 セットを目安にすると良いでしょう。

スロトレのメリット

  1. 自体重を用いたトレーニングでも大きな効果が期待できる。
  2. 腱や関節への負担が少なく整形外科的な傷害のリスクが小さいため、特に高齢者向けのレジスタンス運動として期待される。
  3. 比較的短時間でも大きな効果が期待できるため、自宅でもジムでも効率よくトレーニングすることができる。

このようなメリットを持つスロトレは、効率よく短時間で行えることによりジムでの感染リスクを低減できるという点でも有用です。皆さんも自分のトレーニングの中にぜひ取り入れてみてください。

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セントラルスポーツ研究所(CIS:Central Sports,Institute of Sports Science)では、医学・スポーツ科学の見地から様々な研究やプログラム開発を行い、その成果はオリンピック選手の育成や「0歳から一生涯の健康づくり」に活かされています。