『噛む』ことの重要性を再確認しましょう

セントラルスポーツ研究所ニュース

言うまでもなく「噛む」動作は、食べ物の消化吸収に大切な役割を果たしていますが、それ以外に脳や筋肉を通じて全身の健康状態に影響を与えているということをご存知ですか?今回は日々健康に過ごすための「噛む」ことの重要性をお伝えしたいと思います。

「運動」「栄養」「休養」は三位一体

「噛む」ことをしっかり意識することにより改善できる健康状態の一つとして睡眠があります。ヒトの脳の中には気分を安定させる「セロトニン」という物質があり、セロトニン系の神経回路が健康に働いていると幸福感が増したり、反対にイライラさせる神経回路を弱めたりします。またセロトニンは脳の中で働き終わると次は健康な睡眠を助ける「メラトニン」という物質に代謝されます。
脳神経科学的実験によるとリズミカルな運動を行うと脳の中でセロトニンが増えるということがわかっています。つまりウォーキングやジョギング、階段のぼり(踏み台昇降)などの運動が睡眠にとっても重要な役割を果たしていると言えるのです。そして「噛む」動作もリズミカルな運動のひとつとしてセロトニン回路を強めることが確認されています。また、太陽の光を浴びることで「セロトニン」が増えることが分かっていますので、アウトドアでのウォーキングは良い睡眠を得るための適切な運動と言っても良いでしょう。

良い睡眠のため不可欠な要素

タンパク質を積極的に摂取しよう

良い睡眠を導く立役者である「セロトニン」は必須アミノ酸の一つである「トリプトファン」という物質の代謝産物です。トリプトファンは肉、魚介類、乳製品、ゴマなどに多く含まれており、毎日タンパク質を多く含む食品を積極的に摂取するように心がけることが良い睡眠につながります。

介護予防という観点でも「噛む」ことは重要

「噛む」ことは、別の角度からも重要性が主張されています。高齢者では噛む力が強い人ほどバランス能力が高いということがわかっています。強い力で噛むことができると、首の筋肉の収縮が強くなり、その結果「頭部の安定性が増す」「脚の発揮筋力が増す」「脳の働きが良くなる」などのメカニズムによると考えられています。高齢者にとってしっかり噛むことは誤嚥防止などの観点からも重要ですが、介護予防という側面からも、身体機能を保ち転倒を予防するために重要です。

このように、噛むことは全身の状態に影響を与えており、厚生労働省でも「噛ミング30(カミングサンマル)」運動として噛むことの重要性を広く国民に対してプロモーションしています。健康に過ごすために、朝日光を浴び、しっかり噛んで朝食、昼食を食べ、良い睡眠を誘導することが大切です。この当たり前の生活リズムが崩れやすい現代とはいえ、健康づくりのために常に心がけていきましょう。

*噛ミング30(カミングサンマル)とは

平成21年7月に厚生労働省から出された「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」の報告書では、より健康な生活を目指すという観点から、ひとくち30 回以上噛むことを目標として、「噛ミング 30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズを作成し、小児期から高齢期に至るまでを対象として、口腔の健康と関連させて健康づくりの視点から「食育」を推進することが望まれると意見が示されました。

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セントラルスポーツ研究所(CIS:Central Sports,Institute of Sports Science)では、医学・スポーツ科学の見地から様々な研究やプログラム開発を行い、その成果はオリンピック選手の育成や「0歳から一生涯の健康づくり」に活かされています。